ポールソン米財務長官は2年前、米国の資本主義を象徴する頂からワシントンにやってきた。最近は、育ててもらった資本市場から打ちのめされる日々が続いている。
ポールソン長官が13日示した米住宅金融大手ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の救済計画は投資家から批判を受けている。16日は反発したものの、ファニーメイの株価は13日以降、9.7%下落。フレディマック株も12%値下がりしている。支援策に対する懐疑的な見方は共和党にまで広がった。
米証券大手ゴールドマン・サックス・グループ出身のポールソン長官は就任時、最大の任務は社会保障で妥協をもたらし、中国との経済対話を強化することだと思っていた。それが現在では、深刻化する住宅危機や株安への対処に直面している。
カンバーランド・アドバイザーズの会長兼最高投資責任者のデービッド・コトック 氏はポールソン長官について、「自らが夢にも思わなかった混乱の渦中にある」と語る。
16日の米株式相場は、西海岸で最大の銀行ウェルズ・ファーゴが発表した 2008年4−6月(第2四半期)決算が、減益ながらも利益が市場予想を上回ったため、上昇。金融株が値上がりし、ファニーメイ株は31%、フレディマック株は30%、それぞれ上昇した。
ファニーメイとフレディマックの問題は連邦政府の対応を必要とするほどの脅威を抱えているとのポールソン長官の認識は、ブッシュ米大統領に救済策を支援する必要性を納得させた。政府の関与の必要性を訴えるとは、かつての長官なら想像できなかったかもしれない。06年7月の就任時、米国では消費者信頼感指数は上昇し、株も値上がり、原油も現在の半値だった。
市場は一変
それが1年後に様変わりする。住宅ローン関連証券の価値が下がり、07年8月に信用市場の悪化が始まった。同年11月から今年3月までの米株式相場は月間ベースで下げ続け、同月には証券大手ベアー・スターンズが実質破たん。ポールソン長官は米連邦準備制度理事会(FRB)と協力し、同社を米銀JPモルガン・チェースによる買収を通じて救済した。
ワシントンのシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートの研究員、ピーター・ウォリソン氏は、ポールソン長官が「かつて誰も直面したことのない諸問題に直面している」と指摘する。
そして、住宅ローンのデフォルト(債務不履行)急増で投資先の住宅ローン担保証券が急落したファニーメイとフレディマックの問題が、さらに加わった。ポールソン長官は今週、必要に応じて両社の株式を買い取り、融資枠を拡大する救済策の承認を議会に求めた。ブッシュ大統領の承認は得たものの、市場や議会からは懐疑的な声が上がった。
ポールソン長官はこれまで、自己管理を意味する「市場の規律」を繰り返し強調してきた。しかし、ファニーメイとフレディマックが危機に陥ったいま、両社を救済する期限のない約束をしてしまったのかもしれない。
ハーバード大学のジェフリー・フランケル教授は「塹壕では無神論者でいられないという言葉がある」と指摘。「金融危機時にあっては、自由主義者ではいられないだろう」と語った。
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