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2008年09月23日

■終わらない米金融危機対応、リスク投資の再開には限度

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金融安定化策、短期市場への効果は限定的か

22日の東京市場は株高/債券安。日経平均は1万2000円を回復した。米金融安定化策では公的資金による不良資産の買い入れが盛り込まれ踏み込んだ対策と評価する見方もあるが、一気にリスクを取る動きには発展していない。

米株先物はアジア時間で100ポイント程度下落している。スキーム自体が有効に働くのかに慎重論が根強いことに加えて、民間金融機関の資本不足問題が解決しない限り、金融危機は終わらない、とみられている。

<株式、水準訂正に一巡感>

株式市場では日経平均が続伸し1万2000円台を回復している。米政府による総合金融安定化対策が明らかになったことで投資家の不安心理が後退した。「実現性や効果が不透明で実需筋の買いは少ないが、下値を売りにくくなったことは事実であり、戻り売りをこなし堅調を持続している」(大手証券エクイティ部)との声が出ている。

ただ、日経平均は米リーマン・ブラザーズ(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート) 破たん前の1万2200円水準まで上昇したあとは戻り一服となった。「リーマン破たんを受けてデレバレッジが急速に進んだことで過度に下落した分が、米国が金融安定に向けた対策を打ち出したことで水準訂正された。しかし、住宅ローンの悪化は続いており、これによる景気圧迫については今回の対策では手が打たれていない」(りそな信託銀行チーフ・ストラテジストの黒瀬浩一氏)との声が出るなど市場参加者は依然半信半疑だ。

大和住銀投信投資顧問チーフストラテジストの門司総一郎氏は「市場では金融機関の資本増強に公的資金を使うところまで踏み込んだ対策が出てくるとの期待感が強かったが、その点については言及されていない。米大手投資銀行の危機観測が出ているなか、足元の危機に対しては対応が手薄となっている」という。

門司氏は「3月にベアー・スターンズBSC.Nが破たんに直面したときは、減税など景気対策も打ち出したが、今回はファンダメンタルズに関しては何も対策が出ていない。大統領選挙前で流動的な時期ということもあり新たな減税を出しづらい状況ではあるが、市場対策だけでは根本的な解決にならないのではないか」と指摘している。

三井住友銀行、市場営業推進部チーフストラテジストの宇野大介氏も、米金融安定化策は、不良資産買い取りの規模が不十分で、さらに金融システムのセーフティネットの枠組みとして妥当かどうか疑問といい「今回の金融システム不安の発端は不動産市況の下落にある。金融市場対策も重要だが、利下げや減税も含めた景気対策を打って、不動産市場の軟化を止めるのが先ではないか」と話す。

<円債は底堅い、リーマンの未入金も影響か>

円債は続落。矢継ぎ早に打ち出された米金融安定化策を受け、質への逃避で構築された株売り/債券買いを巻き戻す動きが出た。朝方の取引開始直後に、先物12月限は136円61銭と前週末安値まで下落したが、その後は海外勢主体の買い戻しで下げ渋った。

米金融安定化策の焦点となった不良債権の買い取りは最大で7000億ドルとなったが債券市場では、株式市場とはやや受け止めが異なり、「数値に驚いて債券には質への逃避を巻き戻す動きが出た」(国内証券)という。ただ、政策の実効性に懐疑的な声もあり売りは限られた。

みずほインベスターズ証券・シニアマーケットエコノミストの落合昂二氏は「公的資金による不良債権の買い取りにしても、入札方式などがうまく機能するのか、不透明感がある。対策は具体的な内容が明らかになるにつれて、実効性も見えてくる。質への逃避が投機的な動きが含んでいるとすれば、巻き戻した後に再び巻き上げる動きが出てきても不思議ではない」とみている。

債券売りが限られている背景には、現物需給のひっ迫化も指摘されている。今月に入札された5年債、10年債、1年物割引短期国債(TB)の発行決済日である22日は、落札したリーマン・ブラザーズから代金が国庫に支払われない可能性が出ている。市場関係者の推定によると、リーマンの国債落札金額は総額4000億円余り。払込代金が支払われない場合には、国債未発行になる恐れがある。「なかなか現物ポジションをショートにできない」(国内証券)との声も出ている。

市場では「10年債・1.5%台半ばの水準から、国内勢の押し目買いが入ってくるのではないか」(外資系証券)との声も出ている。

一方、日本証券業協会が発表した8月公社債投資家別売買動向によると、都銀は2兆0804億円の売り越しとなった。2兆円を超える売り越しは07年12月以来8カ月ぶり。外国人は2兆8088億円の買い越しで2兆円超の買い越しは07年8月以来1年ぶりとなった。「クレジット商品や証券化商品など手掛けにくい相場環境の中、下期は消去法的に国債が選好されやすい。都銀はポジションを再構築するために収益基盤を整えた可能性がある」(大手証券)という。

<円売りも限られる>

為替市場でも円売りでリスクをとる動きは限られた。クロス円、ドル/円とも前週末に大きく買い戻されており、東京市場では円売り一服感が広がりつつある、という。

ある外銀関係者は、ドル/円は107円から上値は「104円付近で買った投資家が利益確定する水準」として売りが出やすいと指摘する。実際、午前7時過ぎに一時107.17円付近まで買われたが、ドル売り圧力が厚く反落した。商品投資顧問業者(CTA)や欧米金融機関によるドル売りがみられたという。その後も上値を試しながらも、利益確定売りが出やすいとみられる107円に接近すると上昇ペースが鈍っている。市場では「米市場安定化策によって財政悪化が懸念され、ドルを買い進めにくい」(資本筋)との見方が複数から出ている。

仲値公示後のドル売りで一時きょうの安値を更新し、106.32円まで下落。きょうの高値107.25円から1円安の水準に迫ったものの、その後は反発した。ある証券関係者は前週に下値103円半ば、高値108円付近を付けているとして、短期的にそのレンジ内での値動きを予想、下値の安心感を指摘する。

米株高を受け、日経平均株価が一時300円超上昇するなどアジアの株式市場も軒並み強含みとなったが、ある証券関係者は「日経平均の200―300円程度の上昇は織り込み済み」としており、クロス円全般に上値が重い。

一方、パキスタンの首都イスラマバードにあるマリオット・ホテルで20日、トラックを使った自爆攻撃が発生したことが「金融市場でリスク回避の動きにつながる」(国内金融機関)との見方もある。この爆破事件では現時点で少なくとも53人が死亡、266人近くが負傷した。爆発によって火災が発生し、ホテルの建物は炎に包まれた。

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■米金融危機:不良債権買い取り、価格が焦点−事実上の公的資本注入か

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米国政府による7000億ドルの不良債権買い取りやマネーマーケット・ファンド(MMF)の元本保証の表明、米連邦準備制度理事会(FRB)による政府支援機関(GSE)債80億ドルの買い入れ実施などを受け、内外の金融資本市場では「質への逃避」の緩和と株高が一段と進んだ。今後の焦点は不良債権の買い取り価格。実勢より高い価格での買い取りは、金融機関への実質的な資本注入に等しいとの見方が有力なためだ。

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、「不良債権買い取りという『ゴミ箱ファンド』の創設は、金融機関に対する間接的な公的資金注入に等しい」と分析。「正直に時価評価すればゼロに近い不良債権を、米政府が実勢より高い『理論値』に近い価格で買い取る公算が大きいため」と解説する。

白川氏は、1990年代前半のS&L(貯蓄・貸付組合)危機は「事後的な破たん処理だった」が、今回は金融危機による信用収縮が米実体経済に深刻な打撃を与える前の「予防的な資本注入だ」と指摘。米金融不安は「比較的短期間で解消に向かう可能性が高まっている」と予想した。

22日の東京市場では株価が続伸。日経平均株価は1万2200円台を回復する場面があった。TOPIXも一時1180ポイント台に乗せた。安全性の高い資産に資金を移す「質への逃避」は後退。日本銀行による利下げの観測も低調で、政策金利予想を反映する2年物国債利回りは一時0.8%台、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは1.49%台で推移した。

米資産投資への不安感の後退を背景としたドル買いは一服。米財政赤字の拡大や米政府・FRBの保有資産劣化への懸念もあり、1ドル=106円台後半、1ユーロ=1.45ドル台で取引された。前週末19日の海外市場では一時108円2銭、 1.4153ドルまでドル高が進んでいた。

米財務省の公的資金投入案

米政府は20日、米国内外の金融機関から住宅・商業用不動産ローン関連証券、自動車や学資ローン、クレジットカード債権などの不良資産を7000億ドル買い取る権限を付与し、国債発行限度を10兆6150億ドルから11兆3150億ドルに引き上げるよう、米議会に求めた。ポールソン米財務長官がまとめた。

ナンシー・ペロシ下院議長は声明で、「金融市場への対応を迅速にするために、民主党はブッシュ政権と協力していく」と言明。米上下両院経済合同委員会の議長であるチャールズ・シューマー米上院議員は、米議会が早ければ26日に法案を可決する可能性があると述べた。

ポールソン長官は、米国以外にも数カ国が同様の措置を取るとの見通しを示した。サブプライム問題が金融市場の混乱につながった昨夏以降、世界の主要金融機関が計上した損失・評価損は、合計で約5200億ドルに達している。

日銀の白川方明総裁は18日の記者会見で、米金融危機は「最終的にはソルベンシー(支払能力)という、金融機関の資産の健全性に関わる話になる」と分析。保有資産の評価額下落によるバランスシート(貸借対照表)の悪化という「基本要因に取り組まない限り、問題は解決しない」と強調していた。

金融機関と米国民、利益相反

市場関係者が今後の最大の焦点と見ているのは、不良債権の買い取り価格だ。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「価格の水準、つまり損失を金融機関と米国民がどのように分担するかが最大の難題だ。両者の利害は相反している」と指摘する。

米政府の買い取り価格が高いほど、金融機関のバランスシートは改善するが、米国民の負担は増加。価格が安ければ、金融機関が計上する損失は巨額となる半面、米国民の負担は軽くなるからだ。ただ、安値での買い取りによって金融機関のバランスシート劣化が進めば、「公的資金の追加投入が必要になる恐れもある」と上野氏は指摘。「先行きはなお不透明だ」と語る。

バークレイズ銀行の梅本徹チーフFXストラテジストは、米政府が適正水準を超える価格で買い取った場合、「公的資金注入どころか、金融機関への補助金に等しい効果を持つ」と分析。日本政府が1999年に実施した大手銀行の優先株の強制取得と比べ、今回の米政府の措置は「金融機関が負う政治的・道義的な返済義務が見えにくい」と話す。

買い取り価格は「本来は、実勢であるゼロに近い水準であるべき」だが、金融機関が安値での売却による巨額損失の表面化を嫌って売り渋れば、「かつて日本で起きたように、時間の経過とともに不良債権が増加し、金融危機がさらに深刻化する恐れもある」と指摘。「米国発の金融不安は道半ばだ」と語る。

元本保証、GSE債買い取り

米国は昨夏以降の金融危機に対処するため、景気・住宅市場対策や米住宅公社ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)への資金注入、米証券大手ベアー・スターンズと米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)へのFRB融資など、事実上1兆 4000億ドル弱を投じた。米名目国内総生産(GDP)の約1割に当たる額だ。

クレディ・スイス証券の白川氏は、総額が「今後1兆5000億ドルを超える可能性もある」と見る。「日本が92年度から04年度までに費やした総額156兆円を上回る資金を、わずか1、2年で投入する」規模と速さが奏功し、金融不安の「元凶」とされる米住宅価格は「今後6−9カ月以内に底を打つ公算が大きい」と予想する。

米住宅不況にはこれまでのところ、改善の兆しが見えていない。住宅価格の下落が続き、ローン金利の上昇は止まったが、延滞や差し押さえは増加している。8月の米住宅着工件数は前月比6.2%減の89万5000件と、91年1月以来の最低を記録。先行指標となる住宅着工許可件数も8.9%減と、下げ止まっていない。

米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発した昨夏以降の金融危機は、3月の米証券大手ベアー・スターンズの実質破たん・身売り後、今月に入って一段と深刻化。米2大住宅公社のファニーメイとフレディマック 、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的管理下に入った。米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスは実質破たんし、メリルリンチは身売りに追い込まれた。ゴールドマン・サックス・グループ とモルガン・スタンレーも、株価の大幅な下落に見舞われていた。
(野沢茂樹)

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■ドル、急落の可能性も−市場は金融救済策に伴う財政負担拡大を懸念

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米金融市場の混乱終息に向けたポールソン米財務長官の金融救済計画発表を受け、米国政府の債務拡大が投資家心理を圧迫し、ここ3カ月間のドル上昇が止まる公算がある。

ポールソン長官が米議会に提案した金融救済計画は、金融機関から7000億ドル(約75兆円)相当の住宅ローン関連の不良資産を買い上げるとともに、マネーマーケット・ファンド(MMF)を保証するため4000億ドル提供する内容で、バークレイズ・キャピタルの金利ストラテジスト、マイケル・ポンド氏によれば米政府の借入額は最大1兆ドル増える可能性がある。

救済計画は投資家の金融市場に対する信認を回復させる可能性がある半面、トレーダーらは再び、財政と経常収支の「双子の赤字」や米国の実質マイナス金利に着目する見通しだ。FXコンセプツのジョン・テイラー会長は「裏返せば、ドルは急落するだろう」と指摘する。

同財務長官が計画を発表した19日、S&P500種株価指数は4%高となったものの、ドルはユーロや14主要通貨に対して下落した。複数のストラテジストによると、ドルの上昇局面は6月から始まり、対ユーロで10%、対円で2%、対ブラジル・レアルで約13%上げているが、今回の救済計画で上昇は終わる可能性がある。

ユーロマネー・インスティチューショナル・インベスターの2008年調査によると為替取引3位、英銀バークレイズの為替ストラテジー世界責任者、デービッド・ウー氏(ロンドン在勤)は「米政府のバランスシート悪化に伴うドルへの下押し圧力により、金融危機問題解決観測からくる短期的な上昇は小幅にとどまるだろう」と指摘している。

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■【経済コラム】米国はアメリカ社会主義合衆国に変身か

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米国の金融危機の火消し役として、ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は適役のようだ。

ここに、10年前に米財務省チームが書き残したかもしれないメモがある。ガイトナー総裁は当時、このチームの一員だった。メモのあて先はアジアの金融当局者で、要件は悪化するアジア危機。経済が不安定な状況下で動揺し、投資を引き揚げる動きが出ているとして、アジアの政策当局者に以下の10項目に留意することが重要だと指摘した。

1. 政策金利を引き上げて通貨を支える。
2. 歳出と債務を削減する。
3. 投機家やヘッジファンドを責めない。
4. 不動産の値下がりは急落ではなく調整のため、放置する。
5. 誤った決定を行った者を救済しない。モラルハザードこそ悪だ。
6. 企業セクターの透明性を向上させる。
7. いかなる補助金も悪だ。
8. 金融機関には直ちに不良債権の評価損を計上させる。
9. 問題の責任をマスコミになすりつけない。
10. 米国の繁栄をもたらす自由市場主義に従え。

しかし、財務省はこのところ、上記のすべてを無視せよというメッセージを発している。エマージング・アルファ・アドバイザーズのディレクター、マーシャル・メイズ 氏は先週マニラで、「この戦略の変更に慣れるにはかなりかかる」と語った。

構造的な変化

その他の金融変遷も構造的な変化にほかならないようだ。例えば、1997年のアジア金融危機後に不良資産の整理を支援した韓国資産管理公社(KAMCO )。現在は米国の不良債権最大9億ドル(約960億円)の買い取りを目指している。また、多くの米企業が韓国に資本参加を仰ぎ、米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスも破たん前に韓国産業銀行(KDB)に出資を求めた。

KAMCOの李哲徽(イ・チョルフィ)最高経営責任者(CEO)は「世界ではこの10年であまりにも大きい変化が起きた」と語る。

この変化は先週、アジア開発銀行(ADB)がマニラで開催した会議でも中心的な話題だった。その基本的な考え方は、米国は処方せんに自ら従うよりも途上国に押し付ける方がうまいことが証明されつつあるというものだった。

米国が自国の金融危機に対応するやり方については議論の余地があろう。財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)の行動には依然として自由主義を唱えた経済学者ミルトン・フリードマンの思想が影響を与えているだろうか。それとも、共産主義思想を打ち立てたカール・マルクスが入り込んできているだろうか。

アジアの一部投資家やエコノミストのヌリエル・ルービニ氏からは、アメリカ合衆国(USA)がアメリカ社会主義合衆国(USSA)に姿を変えつつあるとの冗談が聞かれる。

炎に包まれるウォール街

もちろんこれは誇張表現だ。ウォール街が炎に包まれている時に、米国版の暴君として君臨したい人間はいない。バーナンキFRB議長もガイトナー総裁も違う。ただ、自由市場こそが繁栄へ続く道と米国から再三にわたって説教されてきたアジアにとって、このところの展開は混乱を招く。

英スタンダード・チャータード銀行のアジア調査責任者、ニコラス・クワン氏(香港在勤)は「アジア危機以降、安定するまでには多くの資金と試行錯誤が必要なことをわれわれは学んできた。米国はこのプロセスを開始したばかりだ」と述べた。

アジアにとって、現在手本とすべきモデルは何だろうか。欧州か、それともトップダウン方式と市場開放を混ぜた中国方式か。はたまた日本式の金融管理だろうか。世界でも成長著しい経済を複数抱えるアジアにとっての問題はこれだけではない。アジアにとって最大の問題の一つが市場開放ペースに付いていけない政治動向だ。

政局不安を抱えるタイから管理の厳しい中国、政治が機能不全に陥っている日本から停滞するマレーシアまで、アジアは迅速に対応できない政府だらけだ。米国が市場の信頼回復策をまとめ直すなか、アジアはこれまで以上に自らの今後を考える必要がある。

信頼感低下

米国の信頼感がいかに低下したかは、米国とアジア各国の富の比較でよく分かる。貯蓄率の高いアジアが政府系ファンド(SWF)を設立して将来に備えるなか、米国は過去の問題を修復するため不良債権の買い取りファンドを立ち上げようとしている。米国が2000年以降、国際テロ組織アルカイダとの戦いを繰り広げるなか、中国は世界に通用する都市や空港建設を進めた。

騒ぎがいったん収まれば、経済政策担当者は「一段と適切な規制環境」を見いだす作業を始めねばならないと、ADBのラジャット・ナグ事務総長は指摘する。

米証券リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんや米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的管理下に置かれたことを受け、米金融規制当局やニューヨーク州などの一部州当局、米3大公的年金基金は空売り規制に動いた。

10年前にアジア各国が同様の措置を取れば、米当局者はぎょっとしたに違いない。自国が危機を迎えた時に自分自身の処方薬を飲むのがいかに困難であるかを思い起こさせる展開だ。(ウィリアム・ペセック)

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2008年09月22日

■BOAとJPモルガン:買収奏功か−「大き過ぎてつぶせない」

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米銀バンク・オブ・アメリカ(BOA)が証券大手メリルリンチを、JPモルガン・チェースがベアー・スターンズをそれぞれ買収したことで、両行は破たんに陥る可能性が小さくなった。「大き過ぎてつぶせない」規模になったため、危機の際に米政府が支援する公算が大きくなったからだ。

BOAの債務はメリル買収により60%増加し2兆5000億ドル(約267兆円)と、公的管理下に先週置かれた保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の債務9710億ドルの2倍超となった。JPモルガンの債務は5月のベアー・スターンズ買収完了で8%増えて1兆6000億ドルに達した。また時価総額で米銀4位のシティグループは約2兆ドルの債務を抱えている。

1980年代のS&L(貯蓄・貸付組合)危機時に米連邦預金保険公社(FDIC)法務顧問を務めたジョン・ダグラス氏によれば、AIGを基準にした場合、米大手3行はいずれも「大き過ぎてつぶせない」水準に達している。

これにより、3行の株主や債券保有者が恩恵を受ける一方、納税者のリスクは拡大する可能性があると指摘するのはシカゴ大学のルイジ・ジンガレス教授だ。同教授はまた、米住宅金融大手のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が暗黙の政府保証を後ろ盾に長く低金利で社債発行できたのと同様、3行の借り入れコストが減少する可能性があると述べた。

ジンガレス教授はこれら3行の債券は「これにより一段と安全になった」と述べ、「これは相対的にかなり重要な制度上の優位だ」と説明した。

破たんしたモデル

しかし、米ウォール街のモデルは終わりを迎えることとなった。米証券大手5社のうち、単独で生き残ったゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーの銀行持ち株会社への移行申請が承認されたからだ。両社は今後、銀行持ち株会社として米連邦準備制度理事会(FRB)の監督下に置かれ、FRBからより多くの資金を調達できるようになる。両社は預金ベース拡大の意向を示しており、資金調達での債券市場への依存度は低下することになる。

また3行は政府の7000億ドルの不良資産買い入れ計画の恩恵も受ける公算がある。

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■ゴールドマンとモルガンSが銀行に転身−「ウォール街の時代」に幕

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米証券大手のゴールドマン・サックス・グループ とモルガン・スタンレーは21日夜、約20年にわたる「ウォール街の時代」に幕を引いた。独立した投資銀行という事業モデルを投資家が却下した今、そのような存在には将来がないとの結論に達した。

米連邦準備制度理事会(FRB)は21日、両社が銀行持ち株会社になることを承認。75年前に預金金融機関と切り離されて以来続いた証券会社の地位上昇の流れが終わった。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんと米銀バンク・オブ・アメリカ(BOA)へのメリルリンチの身売りという波乱の週は、このような結末を迎えた。

米連邦預金保険公社(FDIC)の総裁を務めたウィリアム・アイザック氏は「この決定によって、われわれが知っているウォール街は消滅した」と話した。

ポールソン米財務長官をはじめ多くの人材を輩出したゴールドマンと、投資銀行と商業銀行を分離した1933年のグラススティーガル法によって誕生したモルガン・スタンレーは先週、株価下落と資金コスト急上昇のなかでも事業モデルの存続を模索していた。

しかし米国株が急落し顧客が離散するなかで、両社経営陣はこれを断念。FRBは21日午後9時の会合で、同日に提出された両社の申請を検討した。FRBのミシェル・スミス報道官によれば、承認決定は全会一致だった。

アルパイン・ウッズ・キャピタル・インベスターズで運用に携わるピーター・コバルスキー 氏は「社会の考え方が変わったのだ」と述べた。

ビッグバン以来

モルガン・スタンレーとベアー・スターンズの株式公開やロンドン金融市場の大改革(「ビッグバン」)のあった80年代以来、ウォール街をこれほどの変化が襲ったことはない。

銀行持ち株会社となることで、ゴールドマンとモルガン・スタンレーは、他の銀行買収などを通して預金という資金基盤を確保することができる。事業資金として、借り入れではなく個人からの預金に頼ることができる。ベアー・スターンズとリーマンを破滅させたのは、不安定な借り入れへの依存だった。

信用収縮が昨年始まって以来、モルガン・スタンレーは157億ドル(約1兆 6700億円)、ゴールドマンは約49億ドルの評価損・貸し倒れを出している。両社は赤字にこそ転落していないものの、収入減は避けられない。調査会社クレディットサイツのアナリスト、デービッド・ヘンドラー氏は、「今は預金金融機関が王様だ。本格的な資金を調達する唯一の方法だからだ」と話した。

銀行持ち株会社となることで、モルガン・スタンレーは選択肢を検討する時間の余裕が得られた。同社は先週、米銀ワコビアとの合併を交渉しつつあった。ノースカロライナ大学のトニー・プラス教授は、「モルガン・スタンレーはワコビアとの合併の案について考え直し、単独での存続を目指すだろう。ワコビアとの合併よりも、割安な銀行を買収することを考えるだろう」と話した。

モルガン・スタンレーは8月末時点で、360億ドルの預金と300万のリテール(小口)口座を持っていた。同社は傘下のユタ州の銀行を国法銀行に変更することを計画している。

全米4位

ゴールドマンは既に2つの子会社を通して200億ドル超の預金を保有し、全米4位の銀行持ち株会社となる。新たな預金金融機関子会社、GSバンクUSAも創設する。21日の発表によれば、同社はGSバンクを、資産1500億ドル以上を持ち米国で10指に入る銀行とする計画。

銀行持ち株会社は通常、FRBの管轄下に置かれる。シティグループとBOA、JPモルガン・チェースもFRB管轄下の持ち株会社だ。一方、証券会社は米証券取引委員会(SEC)の管轄下だが、ゴールドマンとモルガン・スタンレーが 銀行持ち株会社となった後のSECの役割は不透明だ。SECの元法務顧問、デービッド・ベッカー氏は、「大手投資銀行の最後の2社が消えたことを意識せざるを得ない」と話した。

巨額ボーナスも終わり

形態の変更はゴールドマンとモルガン・スタンレーの事業手法にも影響を及ぼすだろう。両社はリスクを減らすと同時に、報酬も減らすかもしれない。ゴールドマンは特に、幹部の高報酬で知られるが、「預金を保護することを法律で義務付けられるだろう。高いレバレッジの時代は終わり。巨額ボーナスの時代も終わりだ」と、マンハッタン大学教授(金融学)で「ウォールストリートの歴史」の著者チャールズ・ガイスト氏は論評した。

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2008年09月21日

■ドル全面安の可能性も、次回G7に注目!「G・ソロス氏がダモレスクの剣と呼んだ危機が現実に・・」【3/3】

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サブプライム住宅不況で昨年4000万円していた一戸建てが2000万円で買えるというのが現金のバブルである。現金が50%バブルしているという勘定になる。投資という意味からは、本来は使用価値である現金がバブルし続けることはない。いずれどこかの時点で、現金は投資に回っていくだろう。

しかし、現在のような現金のバブル状態が長引けばマネーの回転率が下がり世界経済が立ち行かなくなる。そこで各国の金融当局は必死になって対策を打ってくる。今後は政治主導で金融市場の問題が解決されていくだろう。

歴史を見れば結論は見えている。現在のような信用収縮に対峙するにはプリンティングマネー(中央銀行のマネー増刷+国際協調)しかない。そして度重なる流動性の供給でマネーがジャブジャブになると、過剰流動性からまた新たなバブルが起こるのである。

筆者は今年の3 月以降は【投機筋の売りVS 当局の対策】の構図で市場が動いていると述べてきた。現状は信用収縮による売りや手仕舞い主導の相場が続いているが、金融当局も必死に動いているので今後の状況の変化には柔軟に対処する必要があるだろう。

米国市場では9 月18 日午前零時から全公開株に空売り規制が適用されたし、ヘッジファンドに空売りポジションの開示を義務付ける計画も浮上している。SEC のコックス委員長は「1億ドル以上の資金を株式市場で運用するヘッジファンドその他の投資家が、毎日の空売りポジションの報告を早期に義務付けられる見通しである」と発言している。

9 月18 日には日銀・FRB・ECB など各国中銀がドル資金の流動性確保のため協調する(19 兆円分のドルの供給)ことが決まった。中央銀行や金融当局が力ずくの規制・物量作戦に出てきたことは売り方にとって大きな悪材料である。そして、このレポートを書いている最中に「ポールソン米財務長官が議会にRTC(整理信託公社)型の金融問題解決を提案した」(CNBC)というニュースも飛び込んできた。

チャールズ・シューマー米上院議員は「財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)は“恒久的な”金融危機対策を検討している」と述べでいる。金融システム安定に向けての政治的な材料はG7(先進7 カ国首脳会議)待ちとなろう。

現在のところ「経済状況に関する協議を定期的に行っているが、10 月の定例会合前の緊急会合は予定していない」(G7 関係筋)らしい。一方、9 月16 日に予定されていたGSE 関連の公聴会が延期されてしまったが、GSE 関連の公聴会で悪材料が噴出するとドル全面安となる可能性もあるので注意したい。

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■米国:「包括的」な信用危機対策を検討−個別対応に限界、市場も混乱

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米連邦準備制度理事会(FRB)と米財務省による金融危機解決に向けたこれまでの努力は、米国の銀行や証券会社の資本調達能力を削ぎ、破たんに追い込んだり、政府が救済に動かざるを得ない結果をもたらしただけかもしれない。

個別対応で金融機関を救済するだけでは、他の金融機関に問題が波及することが分かり、バーナンキFRB議長とポールソン米財務長官は現在、議会と協力して、「包括的なアプローチ」の強化を検討している。同長官は18日夜、議員らとの協議後、新しい救済計画は金融機関のバランスシートから「流動性の低い資産」を取り除くことを後押しする内容であることを明らかにした。

過去6カ月間、米政府が経営危機に陥った金融機関の命運を個別に判断した結果、市場参加者が他の金融機関の先行きに思惑を巡らせる動きに弾みがついた。FRBが証券大手ベアー・スターンズや保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に緊急融資したり、財務省がファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)に公的資金枠を用意したことが、ドミノ倒しにつながっている。

FRBと財務省が証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスへの公的資金投入を拒否したことで、同業のモルガン・スタンレー株は前週末比で 40%を超える下落となっている。

国際通貨基金(IMF)の元主任エコノミストで現在はシカゴ大学教授のラグラム・ラジャン氏は「金融機関の救済は奇妙なインセンティブを生み出している」とし、「助けようとする人を指差す一方で、次の標的を探し出すのだ」と指摘する。

また、ダラス連銀の元副総裁で、現在はケイトー研究所に所属するジェラルド・オドリスコル氏は「救済により意図せざる結果が起きている」とみる。同氏は「リーマンが攻撃の対象になったのは、ファニーメイやフレディマックと同じ問題を抱えていると投資家が考えたからだ。つまり、資産の時価評価を怠ったという問題だ」と解説する。

米通貨監督庁(OCC)の銀行調査部門に勤めた経歴があり、現在はルイジアナ州立大学教授のジョフ・メーソン氏は「その場しのぎの救済では市場を混乱させ、投資家はどうしたらいいか分からなくなる。このような政策では経済危機を長引かせるだけだ」と話している。

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■安心感につながったドル供給策、信用不安払しょくには至らず

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来週の外為市場で、ドル伸び悩みが予想される。米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート) 破たんの衝撃によるセンチメントが改善されつつあり、全般的に円買いは一服する見通しだが、需給面でドル売り地合いとなりそうだ。  

クロス円も株の買い戻しが一巡すれば、上昇が鈍るとの見方が出ている。23 ―25日にはポールソン米財務長官とバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言する予定。金融危機が表面化している時期だけに、リーマン破たんの一方で保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N: 株価, 企業情報, レポート)には公的資金を注入した対応をめぐり、政府による救済基準が注目される。  

予想レンジはドル/円が103.50―108.50円、ユーロ/ドルは1.41―1.45ドル。   

サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題は、リーマンの連邦破産法第11条の適用申請、米大手銀行バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)によるメリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)買収に発展した。保険大手AIGに対しては公的資金が注入されるなど、米金融セクターは大きく再編される過程にある。さらに、証券大手モルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)にはシンガポール政府投資公社(GIC)が出資に前向きな姿勢を示しているほか、英ロイズTSB(LLOY.L: 株価, 企業情報, レポート)がHBOS(HBOS.L: 株価, 企業情報, レポート)買収など、22日から始まる週でも世界的な金融再編に目が離せない状況が続きそうだ。  

18日に米欧日がドル資金供給の協調的措置を発表したほか、米政府が金融危機の打開策を打ち出す方針を示した後は、投資家のセンチメント改善からドル/円、クロス円とも堅調となった。ある外資系金融機関の関係者は「日経平均株価が堅調なのでクロス円が買われやすい」としながらも「クロス円はオセアニア通貨が強く、欧州通貨は弱い。今週に入ってから説明しにくい値動きが続いている」と述べた。  

ある証券関係者は「資金供給の問題は落ち着くものの、金融セクターへの懸念は払しょくされない」としたうえで「じゃぶじゃぶになったドルは、目先売られやすくなる」との見方を示す。複数の市場関係者が今後のドルについて需給面で緩み、来週以降は徐々にドル売りの方向になっていくとの見方で一致している。また、金融再編のプロセスで「取引は薄くなり、相場が動きやすい」(邦銀)相場も続きそうだ。  

ロイヤルバンク・オブ・スコットランド・ピーエルシー東京支店のヘッドオブFXストラテジー、山本雅文氏は、欧米金融機関への懸念が根強いなか、9月末に向けた資金繰り問題や流動性問題、株価の軟調、金融市場の高ボラティリティ継続などが円高圧力になると指摘。その一方で、危機回避に向けた主要国政府や各国中銀の対応策への期待感が高まった場合の円反落が綱引きの状態になるとの見方を示す。  

また、経済指標への反応は限定的としながらも、米国では8月中古住宅販売(24日)、8月耐久財受注(25日)が軟調を示す場合には、「金融市場の混乱とあわせて米利下げ期待につながり、ドル売り要因として捉えられる」とみている。さらに、ユーロ圏では9月独IFO業況指数(24日)が反発すれば米利下げ期待を背景とするドル安と重なることで、ユーロ/ドルが強含みになる可能性を指摘している。  

一方、みずほインベスターズ証券シニアマーケットエコノミストの落合昂二氏は「仮にAIGが破たんに追い込まれた場合、連鎖破たんなど影響はリーマン以上」との見方を示していた。しかし、「AIGの公的救済はモラルハザードに対する懸念が残る。公的救済を否定したリーマンが破たんしたことを踏まえると、公的救済の基準をどこに求めるのか説明が必要だ」とも述べ、今後金融機関の経営問題がクローズアップされるたびに、公的救済の議論が巻き起こると指摘する。  

これについてFRB高官は16日、AIGが多くの企業や金融市場に幅広く関与しているとして、政府による救済の必要性を強調している。23日はバーナンキ米FRB議長が上院銀行委員会で、24日は米上下両院合同経済委員会で証言、さらに25日にはポールソン米財務長官とバーナンキ議長が米下院金融委員会で証言する予定。破たん金融機関が短期間に表面化しているだけに、企業がどのような状況なら救済、あるいは破たんするのか見極めたいとの声が出ている。

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2008年09月20日

■榊原元財務官:金融危機「あと2年」−投資銀行消え、株安・円高

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早稲田大学インド経済研究所所長で元財務官の榊原英資氏は19日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米国発の金融危機は「あと2年くらい続く」と述べ、年末までに円相場は再び1ドル=100円を突破、日経平均株価は1万円の大台を割り込むと予想した。米証券大手の単独での生き残りは難しく、商業銀行を中心とした金融システムへの歴史的な転換が進むとの見方も示した。

榊原氏は、日米欧の6中央銀行が18日公表した短期金融市場へのドル資金供給策は、信用不安を背景としたドル調達金利の急騰を抑える「適切な措置だ」と評価した。ただ、「問題を根本的に解決する対策ではない」とも指摘。「金融危機の根幹は米国の住宅価格が下がっていること」であり、「2010年の夏」まで米住宅価格が下げ止まらなければ、「金融機関が抱える不良債権は増え続け、金融危機は収まらない」と予想した。

米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発した昨夏以降の金融危機は、足元で一段と深刻化。3月の米証券大手ベアー・スターンズの実質破たん・身売りに続き、今月は米住宅公社(GSE)のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的管理下に入った。米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスは実質破たんし、メリルリンチ は身売りに追い込まれた。ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレー も、株価の大幅な下落に見舞われた。

投資銀行は消える運命

榊原氏は、昨夏以降の金融危機で「投資銀行のビジネスモデルが崩壊してしまった」と分析。米証券2位のモルガン・スタンレーは「あと1週間くらいの間に」単独での生き残りを断念する公算が大きく、最大手のゴールドマンも「中期的には、どうなるか分からない」と述べ、「インベストメントバンクは消えていく運命にある」との見解を示した。

預金を集めて貸し出しを行う商業銀行が中心となる「牧歌的な金融システムに、だんだん戻ってきている」と指摘。この歴史的な「パラダイムシフト」を踏まえ、次期米大統領が就任する「来年以降、金融当局の政策や規制の形であるレギュレーション体系を変える」動きが起こると予想した。

日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など日米欧の6中央銀行は18日午後、ドルの短期金融市場における「資金調達圧力の持続的な高まり」への協調対応策を公表。FRBが5中銀とのドル・スワップ協定を通じ、各国の短期金融市場に最大2470億ドルのドル資金を供給できる体制を整えた。日銀へのドル供給枠は総額600億ドル。

ポールソン米財務長官とバーナンキFRB議長は18日夜、ナンシー・ペロシ 下院議長(民主、カリフォルニア州)など米議会指導者らと緊急会合を開催。信用不安の原因となっている流動性の低い住宅ローン関連資産をバランスシート(貸借対照表)から外す金融機関の取り組みを支援する措置に、議会の支持を求めた。議会指導者らは数日以内の法案成立に向け努力する意思を表明した。

サブプライム問題が金融市場の混乱につながった昨夏以降、世界の主要金融機関が計上した損失・評価損は、合計5159億ドルに達している。

混乱、かなりの期間続く

榊原氏は、米政府やFRBの対応について「枠組み作りに取り組むのは良いことだ」と評価。ただ、1990年代後半の自身の経験も踏まえ、金融危機の最中に政府ができるのは「問題の進行を若干緩めて時間を稼ぐことと、極端に投機的な動きを止めること」であり、「問題の解決ではない」との見解を示した。

金融資本市場の混乱は「乱高下しながら、かなりの期間続く。流れは変わらない」と予想。主要通貨に対する円相場は「極端な円安になっている」ため、対ドル では「年末までに100円を超える」円高・ドル安となり、日経平均株価も「年末には1万円を切っていることもあり得る」と語った。

円の総合的な実力を映す実効為替レート(日銀算出)は、05年1月から07 年7月までに約25%下落。日米欧の通貨当局が85年9月にドル高是正を取り決めた「プラザ合意」以来の水準に落ち込んだ。直近の今年8月も、ほぼ同程度の円安圏に低迷している。

榊原氏は、米金融危機が一段と深刻化する前の今月1日には、円・ドル相場は「当面、105−110円程度のレンジではないか」と述べ、米金融危機が深刻化しない限り、3月のように100円を突破する円高には「しばらくは、ならない」と話していた。

榊原氏は東京大学を卒業後、65年に大蔵省入省。69年にはミシガン大学で経済学博士号を取得した。国際通貨基金(IMF)勤務や同省の銀行局、理財局を経た後、93年に国際金融局次長。円の対ドル相場が1ドル=79円75銭と戦後最高値を記録した95年に国際金融局長、アジア経済危機が発生した97年に財務官。「ミスター円」の異名をとった。99年に退官。慶応大教授を経て現職。

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■【経済コラム】金融市場の大崩壊がもたらす5つの恩恵

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どんな悪い事態のなかにも明るい一面が、どんなに素晴らしい展開にも何らかのマイナスがあるというのが人生の法則だ。米金融システムの大崩壊も例外ではない。金融界が絶望に見舞われるなかでも、見回せば多くの恩恵が見えてくる。

ニューヨーク・マンハッタンの真ん中の魅力的なオフィススペースがたっぷり空いたこともその1つだ。米政府が借金しながらも利息をもらえるようになったことも挙げられる(財務省短期証券の利回りが実質マイナスなのだから、政府は急いでもっともっと借金をするべきだ)。

モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス・グループの最高経営責任者(CEO)が防戦に忙殺されている間に、私たちはのんびりと危機の恩恵に浴そうではないか。

恩恵その1:ウォール街の大手証券会社の中身が初めて見えた。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんについて、私たちはその引き金が何だったのか、根本的原因が何なのかを知ることはないだろう(引き金については、どこかの政府系ファンドがリーマンに金を貸すのをやめたらしいという憶測はあるが)。しかし、ニューヨークの裁判所では今、資産と負債の山がじっくりと検証されるのを待っている。

資産にはもちろん、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン担保証券を筆頭に、リーマンの期待ほどの価値がなかったいろいろな代物が並んでいることだろう。想定元本にして7000億ドル(約73兆7000億円)超のデリバティブ(金融派生商品)を含む負債の方はさらに興味深い。その一部はリーマンが販売した同業他社のデフォルト(債務不履行)に備える債務保証契約だ。

当然の疑問

リーマンの清算価値は数千億ドルのマイナスということもあり得そうだ。その場合、当然のこととして浮上するのは、同じような商売をしていたモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス・グループの状況がどれだけましかという疑問だ。

恩恵その2:金融市場の明日のスターが誕生する。誰もがアラン・グリーンスパン 前連邦準備制度理事会(FRB)議長を信じていた時代を覚えているだろうか。今年の大統領選挙の共和党候補ジョン・マケイン氏は2000 年の選挙の際、グリーンスパン氏が亡くなったら、はく製にして「飾り議長」を続けてもらうと語った。ところが、グリーンスパン氏が表舞台を去り回顧録を出版した途端に、同氏が築き上げた金融システムは崩壊した。グリーンスパン氏が残したのは大混乱ばかりではない。空虚感だ。われわれは皆、何も考えずに崇拝できる人間を当局の中に必要としている。

政府による民間企業救済ほど、そのようなヒーローを生み出すのに適した環境はない。62歳のポールソン米財務長官は恐らく歳を取り過ぎている。ブッシュ米大統領やゴールドマンとの関係もマイナスだ。しかし、47歳のガイトナー ・ニューヨーク連銀総裁は、米国民が今後の金融システムを託す相手として理想的だ。

「こっちを救え!」

「こっちを救え。違う、そっちではなく、こっちだ!」と叫んでいるガイトナー総裁が本当によく分かってやっているのか私には分からないが、とにかく大変な局面で陣頭指揮を執っていることは確かだ。すべてが終わったときには誰よりも真実を知る人間になっているだろう。米国の金融システムがどうなるにしても、よりひどい状態にならなかったことを感謝する対象が必要だ。ガイトナー総裁のやっていることを誰も理解できないので、当然の成り行きとして同総裁が感謝されることになる。

恩恵その3:普通の米国人が金融についての教訓を学んだ。専門家に金を払って市場を出し抜こうとする私たちの傾向は、大きな問題だ。それがウォール街の商売の機会を支えてきた。今回の騒ぎのおかげで、大きな顔をして他人の預金についてアドバイスするウォール街の連中は、好意的に見ても「おバカさん」だということが分かった。

メリルリンチとモルガン・スタンレー、シティグループをはじめ各社はこぞって、優良顧客に入札方式証券(ARS)を現金と同じようなものと言って勧めていた。顧客はもう二度と、疑いもなくブローカーの言葉をうのみにすることはないだろう。顧客の多くは、金を取り返し次第、チャールズ・シュワブに口座を作ろうと決めているに違いない。メリルリンチを買うことにしたバンク・オブ・アメリカ(BOA)はすぐに、メリルのブローカー軍団と顧客の関係がかつてとは様変わりしていることに気付くだろう。

払うのは私じゃない

恩恵その4:新築の家が増えた。そのすべてに人が住んでいるわけではないのは残念だが、大きな問題ではない。何より素晴らしいのは、多分誰も住宅に金を払わなくて済むということだ。米政府は近いうちに、ウォール街が貸し込んだすべての不良住宅ローン債権を保証するところへ追い込まれると私はみている。

納税者が払うことになるのではないかという声が聞こえてきそうだが、それは余りに悲観的だ。確かに、将来のある時点で納税者の負担になるかもしれないが、米政府がお得意の手法で外国人から金を借り続けてくれれば、今ここにいる米国民は何も払わなくて済む。

恩恵その5:ウォール街の幹部に子育ての時間ができる。ここ何年も、ウォール街は余りにも好景気だったので、精力と野心のある人には私生活などなかった。彼らのサービスを必要とする市場が消えてしまった今、家に帰って、あたりを走り回っている子供のうちどの子が自分の子なのかを覚える暇もできる。

未来の金融界に君臨するのは

やがては、わが子を愛することを学び、子供も親を愛してくれるようになるかもしれない。そうすれば、子供たちは親から知識と経験を吸収し、いつの日かウォール街のトレーダーやバンカーになる可能性だってある。そして、高等な金融の世界に君臨しているであろう融資担当者の下で働きながら、親たちの時代の付けを払うための金を、ゆっくりと稼ぐのだ。(マイケル・ルイス)

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■【コラム】今こそ「氷山に激突」なんて格付けはいかが

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金融市場が大きく動揺している今週、信用格付け会社 が賢人ぶった格下げを発表したが、ふざけた話だ。

格付け会社が1997年のアジア金融危機やその後のインターネットバブル、今回の信用市場崩壊でへまをやらかしたことを考慮すれば、格付けなんてくだらないと投資家が考えていると思われているのかもしれない。だがそうではない。米最大の保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)や米貯蓄貸付組合(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルといった誰でも知っている企業の格下げに市場は憤り、困惑している。

いっそのこと、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やムーディーズ・インベスターズ・サービスといった格付け会社は、アルファベットを使って企業の評価を示すことをやめ、真に有益な評価基準を作り出すべきではないだろうか?そこで、少し提案してみたい。全く新しい格付けを考えてみた。

「最後まであきらめるな」級。これは倒れそうな企業のためのものだ。つまり、多くの米金融機関やアジアの一部大手企業、それにリセッション(景気後退)に向かっている経済にふさわしい。米銀大手バンク・オブ・アメリカ(BOA )に身売りする米証券大手メリルリンチへの投資家らには、この格付けが役に立つかもしれない。

「救命具」級。望まない買収の対象となった企業に支援の手を差し伸べるいわゆるホワイトナイトとなる可能性のある企業向けだ。BOAや政府系ファンド(SWF)、それに大口債権を抱える日本の銀行などには適切な格付けだ。

危機が進めば、「非常口を目指せ」級などという格付けはいかがだろうか。その次の段階は「救命ボートの男」級が必要かもしれない。この格付けは破たんした米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスのリチャード・ファルド 最高経営責任者(CEO)に向いていそうだ。同CEOは、158年の歴史を持つ同社が座礁したにもかかわらず、まだ航海できると言っている。

98年の危機

「FRB支援」級といった格付けも検討すべきだろう。FRB、つまり米連邦準備制度理事会は、破たんの瀬戸際にあった米証券会社ベアー・スターンズの米銀JPモルガン・チェースによる買収を支援した。FRBは98年にヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)を救済した後、金融業界への関与を高め、それがリーマンも救済されるとの市場の期待を膨らませた。

その98年、マレーシアのマハティール首相(当時)は米財務省や国際通貨基金(IMF)の助言を無視し、自国通貨を固定相場とし、資本規制を導入した。米政府当局者や世界中のトレーダーの怒りを買いながらもだ。

自力で対応したマレーシアとは対照的に、インドネシアや韓国、タイは国際社会から巨額の緊急支援を受け入れた。あまり知られていない話だが、リスク意識が薄れる「モラルハザード」を懸念した米政府当局者もいたという。各国政府は危機に陥ったからといって、必ず国際的な支援があると期待してはいけないという点で、マレーシアは正しかったのかもしれない。アジアの格付け会社は、米企業に対する独自の格付けを生み出すこともできるだろう。

「ボルカー」級、「速水」級

個人の名前を冠した格付けもあってもいい。例えば、「ボルカー」級や「速水」級だ。ボルカー元FRB議長の名前と同じ格付けは、インフレと真剣に闘っている国向けだ。日本銀行の速水優元総裁の名を借りた格付けは、政治家に屈服した中央銀行のためのものといったところか。現職の欧州中央銀行(ECB)総裁の名を取った「トリシェ」級は、過大評価された通貨に適している。

格付け会社が非難のすべてを受けるいわれはない。企業が透明性を確保し、本当の財務状況をごまかすのにそれほど熱心でなければ、市場がこれだけ驚くこともなかったのかもしれない。

政府や企業の力量にやけくそになった向きには、83年の米映画「大逆転」で描かれた欲に目がくらんで破産した登場人物にちなんだ「デューク兄弟」級という格付けがいいかもしれない。そして事態が本当に立ち行かなくなったら、「氷山に激突」級のお出ましだ。米エネルギー取引会社エンロンや米通信会社ワールドムなどの破たん前がこれに当てはまる。最近ではベアー・スターンズやリーマンも相当するはずだ。

問題は、次に氷山に激突するのはどの金融機関かということだ。格付け会社にはもっと良い仕事をしてもらいたいが、アルファベットに頼るだけでは不十分ではないか。(ウィリアム・ペセック)

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2008年09月19日

■金急騰、米公的資金注入めぐり米国債信認に警鐘の声

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米市場を震源地にした金融不安のうねりは日に日に強まり、18日の東京市場では日経平均.N225が一時、前日比400円を超す下落となった。中でも注目されるのは金価格の急騰だ。安全資産への逃避という「教科書的な」解釈がある一方で、これからどの程度の公的資金が必要なのか全く不透明な米国の財政事情や、米国債の信認に対する警鐘との見方も急浮上している。

日経平均は大幅反落した。前場は前日比350円を超える下落となったが、後場は空売り規制を発動する米株式市場の動向を見極めたいとする一部参加者が「先物を中心に買い戻した」(国内証券)ため、やや値を戻した。

ただ、米政府によるアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N: 株価, 企業情報, レポート)救済でも米金融不安はいっこうにおさまらず、リスク資産から資金を引き揚げる動きが依然として継続している。ヘッジファンドの換金売りなどに対する警戒感から金融株や不動産株が大きく売られた。

こうした不安心理と並行して進んだのが、金価格の急上昇だ。17日の米商品市場で、金現物は一時、88.55ドル上昇。1日の上げ幅としては1980年1月に記録した85ドルを上回り、過去最大の上昇となった。市場では、信用不安の高まりで安全資産である金への着目度が高まったとの声が多い。カネツ投資顧問・調査部の影山辰夫アナリストは「資金の逃避先としての買いが入ったようだ」とした上で「株が落ち着きを取り戻せば金が急落する可能性もある」として、ホットマネーのシフトに警戒感を示している。 

<金価格上昇の裏に米公的資金大盤振る舞いの思惑>

一方で、米国債の信認低下が背景にあるとの見方が急速に広がりをみせている。ある外資系証券の関係者は「事実上の国有化になったAIGが、公的管理の最後ではない。これはスタートに過ぎないという見方がマーケットに浮上している。米政府がどのくらいの規模の公的資金を注入したら金融不安が沈静化するのかだれにもわからい。これが金価格の上昇につながっている」と指摘する。

別の国内証券のある関係者も「FRB(米連邦準備理事会)は最後の貸し手から最後の買い手になってしまった。これから米国の財政出動がどこまで進むのかわからないが、米国債の信認低下が金上昇の背景にあるのは間違いない」と述べる。

信州大学・経済学部教授の真壁昭夫氏は「市場にはすでに米国の財政支出が1兆ドル程度になるとの試算も出ている」とし、巨額に膨れるとみられる米国債残高への懸念が金上昇とリンクしていると分析する。真壁氏は「すでにCDS市場では、米国債のプレミアムが独連邦債のプレミアムを上回っている。この傾向が続けば、米金融危機からドルと米国自体の危機に発展するリスクがある」と述べる。

そのドル暴落リスクをかろうじて抑え込んでいるのが「マーケットにあるドル買い協調介入への恐怖心だ」と話す。今年3月に日米欧で協調介入の合意ができていたということが伝えられ、ドルの暴落を防ぎ、米国債の急落を回避していると真壁氏はみている。

<米欧市場で広がる不安心理>

米金融不安の増幅で、17日の米欧株式市場は、AIG救済策の発表にもかかわらず、大幅下落に見舞われた。17日の欧州市場は英住宅金融最大手HBOS(HBOS.L: 株価, 企業情報, レポート)の経営不安で大きく揺れ、ロンドン株式市場でFT100種総合株価指数.FTSEは2005年半ば以来の安値で引けた。関係筋によると、英銀行大手ロイズTSB(LLOY.L: 株価, 企業情報, レポート)は17日、HBOS買収で合意したが、「人々は次の破たん先がどこになるかと恐れ、懸念が広がっている」(MKMパートナーズのシニアバイスプレジデント、ジョン・オブライエン氏)という。

米国株式市場でもAIG救済計画が果たして十分なものかどうかをあらためて疑問視している。AIGの株価は45.9%急落し、ダウ.DJIも449ドル安となった。米証券大手モルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)の合併話が取りざたされるなど金融不安は沈静化するどころか広がりをみせている状況だ。

リスクマネーは株式市場からの資金引き揚げを急いでいる。「投資家は保有する投資のすべてを見直し、どんな種類であってもリスクがあればすぐに売っている。異例の状況」(キャピタル・シティーズ・アセットマネジメントの投資戦略部門バイスプレジデント、ジョン・シュロージェル氏)。

米証券取引委員会(SEC)は17日、投資家保護に向け株式の不正な空売りを規制する新たな対策を発表したが「ヘッジファンドの換金売りは実弾の売り。空売り規制では止められない」(準大手証券トレーダー)との指摘も出ている。

世界の短期金融市場では、ドル不足が深刻化し、18日のアジア銀行間市場でも、翌日物金利の一部は8─8.5%で取引された。こうした事態を受け、日米欧など6中銀は18日夕、ドル資金の大幅な供給を目的とした流動性供給策を発表した。

<日本でもリーマン破たんの影響拡大>

グローバルな広がりをみせる金融不安に対し、当初は「対岸の火事」とみていた東京市場の参加者だが、リーマンの破たん以降、実害が出る事態となって見方が急速に厳しくなっている。ちばぎんアセットマネジメント専務の安藤富士男氏は「金融機関だけでなく米国経済の減速による事業会社への影響も気がかりだ。米ゼネラル・モーターズ(GM.N: 株価, 企業情報, レポート)など大手企業の資金繰りに影響が出るようだと事態は深刻化してくる」と警戒する。

明治ドレスナー・アセットマネジメント・トレーディング部長の若林仁氏は「リーマンへの対応は、(当局の)判断が甘かったという見方も出てきているようだ。欧米の政策協調の下で場当たり的でない政策を着実に打っていくことが当面の打開策になる。米国発の混乱がヨーロッパまで波及する可能性もあり、国際的な連携が必要だ」と、金融不安がさらに深刻化するリスクに言及した。

リーマン破たんは日本国債の発行や売買にも影響を及ぼした。2年利付国債と政府短期証券の計1287億円分についてリーマンから落札代金が払い込まれず、国債発行ができない状態が発生。さらにリーマンから国債を買った参加者が国債を入手できないという状況に直面している。22日には1年物割引短期国債、5年利付国債、10年利付国債の払込日を迎え、同様の事態になるリスクを抱えている。

ある邦銀関係者は「リーマンを破たんさせたことは、取引の相手先を信用できないという疑心暗鬼に火を付けた。今のところ、東京短期市場は、米欧の短期市場のようにまひするまでには至っていないが、流動性が低下傾向にあることは否定できない」と述べている。現在のレートは、時系列のレートはJPNUTKYFXをご覧下さい。

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■リーマンやメリル,AIGは金融再編劇の始まり-“弱肉強食”の時代に

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リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんとメリルリンチの身売りは、金融業界再編劇の始まりに過ぎない。今後、事業を継続できなくなり資産整理や清算に追い込まれる金融機関が増えそうだ。   

コンパス・アドバイザーズ(ロンドン)のシニアパートナー、フィリップ・キービル 氏は「金融機関の合併や資産売却は増えるだろう。辛い決断を迫られる者も多いだろう」として、「弱者が強者に身売りや資産切り売りをする構図になろう」と話した。   

英銀バークレイズはロンドン時間17日、リーマンの米投資銀行部門を17 億5000万ドル(約1840億円)で買収することで合意した。米保険大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は16日、米政府から850億ドルの融資を受け当面の破たんを回避したが、複数の米金融当局者は匿名を条件に、融資返済のために会社清算や資産売却が必要となる公算が高いと語った。   

UBSのアナリスト、フィリップ・フィンチ氏は今週の顧客向けリポートで、「危機は今や、新局面に入りつつある。各社の意向に沿わない再編も必要となる段階だ」と分析した。同氏は投資銀行が採用してきた「ブローカー・ディーラー」という事業モデルは崩壊したとし、「歴史はさらなる金融機関の破たんと望まざる合併を示唆している」と指摘した。   

約1年1カ月前に始まった世界的な信用危機のなかで、大手金融機関は 5100億ドルを超える評価損・貸倒損失を出した。金融機関は増資や資産売却に奔走し、今月だけでも710億ドルの買収が発表された(ブルームバーグ調べ)。                

HBOS   

英銀ロイズTSBグループは、同国の住宅金融最大手HBOSの買収に向け交渉している。HBOSは今年、時価総額のほぼ4分の3を失った。ペレラ・ワインバーグ・パートナーズのパートナー、バーナード・ゴールト氏は体力の落ちた銀行について「これらの銀行はどこも、バランスシートの大掃除が必要だ」とし、「次の行動を決断しなければならないだろう」と話した。   

アナリストらは、米S&L(貯蓄・貸付組合)最大手のワシントン・ミューチュアルが、資産売却または身売りを模索する可能性があるとみている。同社の信用格付けは15日にジャンク級(投機的格付け)に引き下げられた。HBOSも英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)も今年、資産売却を図った。  

UBSのフィンチ氏は、業界再編で恩恵を受けるのは恐らく、クレディ・スイス・グループ、米JPモルガン・チェース、英銀HSBCホールディングスだろうとみている。

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■ドル防衛を連呼、米当局も本腰に!

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AIGで緊張が走り、米当局も本腰を入れてきました。
対処療法ながら政策を総動員してくるでしょう。
一つの山場を超えましたが、来週の公聴会が注目されています。

伊吹財務相 (更新:09/19 11:09)
各国がドル防衛や米経済悪化の回避に政府・中銀で万全の態勢とっている日本も輸出減退し、為替乱高下という間接的影響受ける=米金融不安で米国も日本のケースを参考にするのではないか=米RTC型機関設立報道で根本的には不動産関連バブルがどう収束するかが大切=米経済で主要中銀によるドル供給策、心理的にドル防衛の協調体制できていること印象付

ドルがジャブジャブになると普通はドル安になりますが、今回の場合、伊吹財務相がドル防衛という言葉を何度も使っているように市場安定のほうを好感してドル買いになっています。

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■AIG破産の原因、債務保険料の3倍への急騰

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9月15日時点で、モルガンスタンレーと、ゴールドマン・サックスが関係したCDS(債務保証保険)の平均スプレッド幅は、なんと 600ベーシスポイント(=6%)です。1ベーシスポイントは0.01%です。

前週末から400ベーシスポイント(4%)も上がっています。スプレッドは、保証料に相当します。

つまりクレジットのリスクが高まったと認識され、保証料が、3倍に急上昇した。リスクを引き受けていた金融機関は、また、巨額損を蒙ります。
(フィナンシャルタイムズ:08.09.17)

これが、AIGが破産した原因です。世界のCDSの総額が、4500兆円。(4500兆円はISDAが発表している数字1997年央までの残高)わずか1%の上昇でも、先週比で45兆円の損失可能性の増加に相当します。

AIGが関係したCDS(5年もの)は、3000ベースポイント(30%)にスプレッド幅(保証料率)が急騰しています。これが倒産です。

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■レバレッジのつけがまわる、バブル化と崩壊の堂々巡り!

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「過去20年、本来なら航空宇宙分野やロケット工学などに進むべき人材が金融バブルの影響で投資の世界に大挙して押し寄せてきた。

このクオンツと呼ばれる連中が作るクレジット・デリバティブと呼ばれる複雑な商品は、顧客のほうで原価がわかりにくいため収益幅が大きく金融機関に膨大な収益をもたらした。

JPモルガンが開発した債券の倒産リスクだけを権利として流通させるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場は2002年以降急拡大し、現在その市場規模は保証対象債務の額面で62兆ドルに達している。現在、この市場が2008年3月のベアー・スターンズ破綻騒動以来の危機的状況を迎えている。

米国の住宅ローンなどの債権の債券化と相まって過去5年間、米英の主要銀行は皆レバレッジを急拡大させたが、そのツケが現在まわってきているのである。」

このままでは資産デフレ=「現金のバブル」が続き、マネーの回転率が下がり不況色がいっそうきわまります。これに対峙するには各中央銀行がプリンティングマネーで流動性を供給するしか手はありませんが、その意味で今度のG7は注目です。仮にジャブジャブにすると、また何かがバブルします。国際的なデリバティブ商品の持ち高規制のような枠組みを作らないと堂々巡りです。

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2008年09月18日

■FRBに愛されたAIG、捨てられたリーマン-市場の勝敗は当局の手に

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米連邦準備制度理事会(FRB)は米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんを座視した2日後、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)を救済した。市場の勝者と敗者を、当局が選り分ける時代がやってきた。

金融危機が収束しようとしないなかで、FRBは誰を救って誰を見捨てるかをケースバイケースで判断し、そのたびに新たな前例を作り出している。ある意味で、経営難企業をめぐるリスクとリターンを市場参加者が自ら判断する機会や意欲を奪っているかもしれない。

FRBの金融政策局長だったビンセント・ラインハート氏は「当局はリーマンのケースでけじめの一線を引いたのに、AIGでそのラインを後ろにずらした」として、AIGへの「融資は、中央銀行の役割についての問いを浮上させる」と述べた。

住宅ローン証券関連の損失でAIGが破たんの危機にひんしたことを受け、FRBは16日遅く、米財務省の協力を得て、AIGに最大850億ドル(約9兆円)を融資する緊急措置を講じた。バーナンキFRB議長とポールソン米財務長官はリーマンへの資金供与は拒否し、同社は15日、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きを申請した。

ピーターソン国際経済研究所(PIIE)の副ディレクター、アダム・ポーゼン氏はテレビインタビューで、AIGへの当局の融資について「悪いニュースだ。不明確な前例を作る」として、「AIGの資本目減りと手元流動性の悪化は何カ月も続いていた。理性ある相手方は取引を手じまいできたはずだ」と語った。

ベアー・スターンズ

同氏の指摘は、FRBと財務省がリーマン救済を拒否する際に用いた議論と全く同じだ。ウォール街はリーマンの問題を何カ月も前から認識していたと当局は指摘。3月のベアー・スターンズの突然の危機とは異なると主張した。当局はベアー・スターンズの身売りを実現させるため、不透明な資産を担保に 290億ドルを融資した。

ウォール街は住宅ローンの返済が続くことに数十億ドルを賭け、ローン債権を基に複雑な仕組み商品を組成し続けた。しかし現在、米国の住宅ローンの 10件に1件が延滞かデフォルト(債務不履行)の状態にある。

一部の民主党議員からは、包括的な救済策を求める声が出始めた。下院金融委員会のバーニー・フランク委員長(民主、マサチューセッツ州)は15 日、次に議論すべきなのは20年前の米S&L(貯蓄・貸付組合)危機の際の整理信託公社(RTC)のような破たん処理専門機関を作るかどうかだと語った。

一方、上院銀行委員会の共和党幹部、リチャード・シェルビー上院議員(アラバマ州)は、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、救済に反対することこそがより良いメッセージだとして、「手荒いやり方かもしれないが、それが市場経済というものだ」と論じた。(Craig Torres, Scott Lanman)

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2008年09月17日

■【コラム】米当局、金融システム防衛で0.5%の利下げも

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どんな手段であろうと、米連邦準備制度理事会(FRB)は米国の金融システムひいては世界の金融システムを守るため、行動を惜しまないだろう。

16日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が現行の年2.0%から引き下げられる可能性がある。もし、そうだとしたら、金融市場が大恐慌以来の最大の危機を切り抜けられるように、FRBは支援を惜しまないという姿勢を強調するため、下げ幅は0.5ポイントであるべきだ。

米金融当局は先週末のニューヨーク連銀での緊急会合に深くかかわったが、米証券4位だったリーマン・ブラザーズ・ホールディングスは連邦破産法 11条に基づく会社更生手続きの適用を申請し、米銀大手のバンク・オブ・アメリカ(BOA)は米証券大手のメリルリンチの買収に動く結果となった。

15日の金融市場の混乱はあまりに激しく、FRBはFF金利を2%近辺に維持しようと、短期金融市場に700億ドルもの資金を供給せざるを得なかった。

先週末の12日時点では、投資家はFF金利の誘導目標の変更など予期していなかった。しかし、リーマンの経営破たんや他の金融機関への破たん連鎖の懸念から、FF金利先物は現在、投資家の過半が0.25ポイント幅の利下げを予想していることを示している。

圧力にさらされている他の金融機関を支援しようと、金融当局は再び、投資銀行に対する直接融資制度を拡大。プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)向け窓口貸付について、受け入れ担保の種類の制限を緩和した。

さらに、プライマリーディーラー向けに米国債を貸し出す措置、ターム物証券貸与ファシリティー(TSLF)では、今後投資適格級の債券すべてを担保として受け入れ、入札回数も「2週間ごと」から「毎週」に増やす。

追加流動性対策

FRBは14日の声明で、こうした変更は担保の種類を「大幅に拡大」し、「プライマリーディーラーや金融市場全般の流動性」を支援するのに寄与するだろうと表明した。

一連の措置は、金融危機以降、当局による市場安定化に向けた第2、第3の追加的な信用供与策である。今春まで投資銀行はFRBから直接資金を借り入れることはできなかったが、米証券大手のベアー・スターンズの破たんを契機に窓口貸付制度は投資銀行向けにも拡充されたばかりだ。

銀行はかつて、自行の財務体質のぜい弱さと見なされるのを恐れて、FRBの窓口貸付制度を利用するのを避けてきた。しかし、今や窓口貸付の利用は日常茶飯事となり、10日時点では投資銀行およびその他金融機関の借入額は過去最高の235億ドルに達した。

窓口貸付に適用する公定歩合はFF金利を0.25ポイント上回る設定になっており、FF金利の誘導目標が引き下げられれば、公定歩合も引き下げとなるだろう。

メルトダウンを防げ

FRBは次に何をするだろうか。必要なのは取りも直さず市場の崩壊(メルトダウン)を防ぐことである。

リーマンのケースでは、FRBと米財務省はベアー・スターンズの時と違って公的資金投入のリスクを拒絶した。リーマン救済による政治的な反発を恐れたこともあるし、今回は公的資金の必要性はなかった。

破産手続きは通常、時間のかかるプロセスであり、ベアー・スターンズのように、他の金融機関と密接なつながりのある金融機関が資金不足に陥った際に起こりうる金融システムの破たんを回避するのには適していない。

リーマンはFRBから資金を調達できたので、同社の問題は流動性不足にあったのではなく、巨額の損失計上が続き、株価急落のなかで資本調達が不可能になったということにある。

公的資金を拒否

当局者らは、リーマンは秩序立って清算することが可能であり、破たんしてもシステミック・リスクをもたらすことはないと結論付けたに違いない。ポールソン 財務長官がリーマン救済への公的資金投入を断固として拒否したところをみると、それ以外に考えられない。

リーマンに関連したデリバティブ(金融派生商品)やその他取引を解消するのは、膨大な作業となるだろう。このため、何かが起きるというリスクは依然残っており、もし、問題が起きれば、あまりに大きく、FRBと財務省は窮地に立たされる可能性がある。

また、別のリスクもある。リーマンが自社資産の売却に動けば、他の金融機関が保有する同種資産の価値は下落し、評価損拡大の悪循環をもたらす可能性がある。FRBは15日、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループに対し、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)へ約700億ドル融資するよう要請した。


利下げ消極派も

16日のFOMCで検討しなければならない問題の一つは、最近の混乱がどの程度信用供与を阻害し、経済に打撃を与える可能性があるかという点だ。だが、FOMCの中にはインフレ率が望ましい水準よりもずっと高いという理由から、利下げに消極的姿勢を示したメンバーもいる。

金融市場の問題は弱体化した経済にさらに打撃を与える可能性があるという懸念から、商品相場は15日急落し、原油相場は1バレル=100ドルを割り込んだ。金融の混乱や景気先行きのリスク、インフレ圧力の緩和などを考慮すると、0.5ポイントの利下げは強い説得力がある。(ジョン・ベリー)

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■米金融危機で質への逃避、株安・ドル安−米利下げ、円100円突破も

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リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの実質破たんやメリルリンチの身売りなど、市場関係者の想定を上回る米金融危機の深刻化を受け、内外の金融資本市場では安全資産に資金を移す「質への逃避」が加速。株価急落とドル安・円高、金利低下が進んだ。米利下げ観測が一気に高まり、円相場が再び1ドル=100円を突破するとの見方も浮上している。

米投資銀行4位だったリーマンは15日、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請。米証券3位のメリルは同日、米銀大手バンク・オブ・アメリカ (BOA)への身売りで合意した。米欧の大手金融機関10社は流動性確保を目指し、700億ドル規模のファンドを設立。米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、米短期金融市場に2001年9月の米同時多発テロ以来最大となる700億ドルの資金を供給した。

DIAMアセットマネジメントの山崎信人エグゼクティブファンドマネジャーは、「サプライズな展開だ」と述べた。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、「公的資金の活用など、米政府・FRBの積極的な関与がなかった点が最大のポイント」と指摘。第一生命経済研究所の島峰義清主席エコノミストは、「米政府に対する市場の不信感は根強いものになろう」と語った。

16日の東京市場で、日経平均株価は一時、前週末より600円余り下落。 2005年8月以来、約3年1カ月ぶりの安値をつけた。円・ドル相場は1ドル= 104円4銭まで円高・ドル安が進んだ。前週末は107円94銭だった。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは1.4%を割り込み、約5カ月ぶりの水準に低下(相場は上昇)した。債券先物相場は急騰し、取引が一時停止となった。

日銀も2兆5000億円供給

日本銀行は、米欧の中央銀行と協調して金融市場の動揺を抑えるため、16 日の金融調節で合計2兆5000億円の資金を短期金融市場に即日供給した。白川方明 総裁は「円滑な資金決済と金融市場の安定確保に努めていく」などとした談話を発表。無担保コール翌日物金利は同日、日銀の誘導目標(政策金利)である 0.5%を上回って推移した。

米国ではリーマンの破たんやメリルの身売りだけでなく、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)も、資本増強策がまとまらず、苦境に陥っている。15日の米株式市場では、株価が約半分に急落。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やムーディーズ、フィッチ・レーティングスは同社を格下げした。米S&L(貯蓄・貸付組合)最大手のワシントン・ミューチュアルも、ジャンク級に格下げされた。

米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱が昨夏に表面化して以降、世界の主要金融機関が計上した損失・評価損 は合計5142億ドルに達した。

米金融危機の深刻化と景気低迷、原油価格の大幅な下落を受け、米国が利下げ に追い込まれるとの観測が急速に台頭。米金利先物相場は、FRBがきょう開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げする確率を68%織り込んだ。1カ月前はゼロ%だった。年内利下げは9割近く織り込み、米政策金利が現在の2%から1.25%まで引き下げられるとの予想も7.4%反映されている。

「失われた10年」踏襲、100円突破も

消費者物価の上昇率が前年比2.4%に高まる中で政策金利を0.5%に据え置いている日銀に関しては、利下げ観測は現時点では低調だ。このため、日米金利差 は縮小に向かうとの見方が有力。JPモルガン・チェース銀行東京支店の佐々木融 チーフFXストラテジストは、「米金融不安を背景とした投資家のリスク回避による円買い戻しに加え、日米金利差も縮小するため、円高・ドル安圧力が一段と高まる」と予想する。

三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは、米国は日本が1990年代から2000年代初頭に経験した「失われた10年」を「そのまま踏襲している」と指摘。円・ドル相場は「年内に100円を突破する可能性も十分ある」と話した。為替相場のチャート分析に詳しいドイツ証券の大西知生ディレクターも、「中期的には100円突破が視野に入ってきた」と読む。

ドルの総合的な強弱を映す実効相場(FRB算出、対主要通貨)は11日に約1年ぶりの高値をつけた後、15日までに1.4%下落した。円相場は今月、主要 16通貨 すべてに対して上昇。与謝野馨経済財政担当相は16日の記者会見で、不自然な為替変動には対応する必要があるが、「現在の2−3円の変動は静かに受け止めるべき」との認識を示した。

流動性枯渇、FF金利6%に

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、急ピッチで進む米金融再編は「中長期的に見れば、米金融システムの強化につながる」と指摘。ただ、金融機関への「予防的な公的資金注入がないと、金融不安の解消は望めない」と強調した。

リーマンの破たんやメリルの身売り、AIGの増資難航などを受けた15日の米国市場では「質への逃避」で米国債が買われる半面、民間金融機関の間では流動性が枯渇。株価やドル、原油は急落した。

米財務省証券3カ月物利回りは、前週末比0.67ポイントも低い0.8%。米証券5位だったベアー・スターンズが米銀大手JPモルガン・チェースに身売りした直後の3月下旬以来の低水準となった。米2年物国債利回りも1.71%と、4月以来の2%割れ。米10年債利回りは3月以来となる3.39%に急低下した。

一方、金融機関どうしが手元資金を融通し合う短期金融市場では、資金繰り悪化や破たんの不安から流動性が枯渇。ICAPによると、フェデラルファンド(FF)金利は15日に一時6%に急騰。FRBの誘導目標を4ポイント上回り、ブルームバーグが同データの収集を始めた98年以来最大の格差を記録した。

TEDスプレッド、CDS

ロンドン銀行間貸出金利(LIBOR)市場では、ドル建ての翌日物金利が前週末より0.96ポイント高い3.11%に急騰。米政策金利(2%)を1%超も上回った。同3カ月物金利は2.81%台で、ほぼ横ばい。米財務省証券3カ月物利回り と同年限のLIBORとの利回り格差「TEDスプレッド」は2%を突破。3月下旬につけた高水準に、ほぼ並んだ。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、社債保証コストが急上昇。北米の投資適格級企業125社で構成するマークイットCDX北米投資適格指数 は、過去最高の193ベーシスポイント(1bp=0.01%)。投資適格級の欧州企業125社で構成するマークイットiTraxx欧州指数も129bpと、3月下旬の高水準に迫った。指数上昇は信用の質が劣化したとの認識を示唆する。

S&P500種株価指数は01年9月の米同時多発テロ以来の大幅な下げを記録し、05年10月以来の安値に沈んだ。ダウ工業株30種平均も前週末比500ドル以上下げ、1万1000ドルを割り込んだ。投資家心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(恐怖指数)は31.7と、ベアー・スターンズが実質破たんした直後の3月17日以来の高水準となった。

商品安、ディスインフレ

商品相場の代表的な指標の1つとされるロイター・ジェフリーズCRB指数の年初来変化率はマイナスに転落した。ニューヨーク原油先物相場は16日の時間外取引で一時、約7カ月ぶり安値となる1バレル91ドル台まで下落。7月に記録した過去最高値147.27ドルから4割近く下げた。

米10年債とインフレ連動債(TIPS)の利回り格差が示す予想インフレ率(BEI)は1.77%と、「ディスインフレ」(物価上昇率の過度な低下)懸念が根強かった03年7月以来の水準に低下した。

米金融不安の「震源地」とされる米住宅不況には改善の兆しが見えない。住宅価格 の下落とローン金利の高止まり、延滞や差し押さえが増加傾向にある。8月の失業率は6.1%と、5年ぶりの高水準に悪化。鉱工業生産指数は前月比 1.1%低下し、05年9月以来の大幅な悪化となった。

商品市場に限らず、新興国市場からの資金流出も続いている。JPモルガン・チェースによると、新興市場債と米国債の利回り格差は16日に393bpと、 05年5月以来の大きさに拡大。新興市場株の指標であるMSCI新興市場指数は16日に800.7と、06年10月以来の安値に下落。昨年7月の高値からの下落率は4割を超えた。

中国人民銀行は15日、1年物基準貸出金利と一部銀行の預金準備率を引き下げると発表した。

日銀も利下げを余儀なくされるとの観測は、現時点では高まっていない。ただ、リーマンに対する無担保大口債権者に、あおぞら銀行やみずほコーポレート銀行などが名を連ねていると判明。国内株価急落の一因となっている。(野沢茂樹)

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